ピルスナーってどんなビール?その歴史や種類、オススメのビールを紹介します

ピルスナーってどんなビール?その歴史や種類、オススメのビールを紹介します

熊倉
熊倉

こんにちは!
下町系酒場では中ジョッキではなく大瓶派のCRAFT BEER TIMES編集部の熊倉です。

あなたは世界で最も消費量が多いビールはどんな種類のビールかご存知でしょうか?

その答えはズバリ、ピルスナーです。

世界全体で飲まれているビールの7割以上はピルスナーであると言われており、日本に限って言えばその割合は9割以上にもなります。

例えば、日本で最も売れているアサヒスーパードライや、テレビCMでもよく見るキリン一番搾り、サッポロ黒ラベルなど、これらは全てピルスナーに分類されます。

そのため世の中にはビール=ピルスナーという認識でいる人も少なくありません。
かく言う私もかつてはそのように考えていました(笑)

しかし、これだけ世界に普及していながらも、ピルスナーは意外にもビールの歴史においてはごく最近に生まれたビアスタイルなのです。

今回はそんな世界中の人々に最も飲まれているピルスナーについて解説していきます。

「ピルスナー?そんなのどれを飲んでも代わり映えのないつまらないビールだよ」

そう思っていた時期が私にもありました…

実はピルスナーの世界は奥が深く、その製法や味わいには大きな違いがあるのです。
違いがわかればいつものビールでももっと楽しく飲めること間違いなしです!

この記事を読めばあなたのピルスナーに対する印象が変わるかも?
ぜひ、ご一読くださいませ!

ピルスナーとは

ピルスナーはチェコ発祥の淡色ラガービールです。
世界で飲まれている7割以上のビールはこのピルスナーとされており、ラガービールを代表するビアスタイルとも言うことができます。

ピルスナーの最も大きな魅力は、なんといっても爽やかな飲み心地です。

麦芽の風味とホップの爽快な苦味が程よく感じられ、豊かな炭酸は喉を刺激します。透明度の高い黄金色の液体ときめ細やかな純白の泡は美しく、7:3の黄金比率が最も映えるビアスタイルです。

また、ピルスナーの爽やかな味わいは食事の邪魔をせず、どんな料理とも合わせることができます。

ピルスナーの歴史

ピルスナーは1842年、チェコのピルゼン地区で誕生しました。

このピルスナーの誕生はまさに革命的なものであり、ビール業界にとてつもなく大きな変化をもたらしました。

ここではそのピルスナー誕生も経緯と、それが与えたビール業界への影響を振り返っていきます。

ピルスナーの誕生

19世紀当時、エールビールを製造していたチェコのビールは腐敗に悩まされ、品質があまり良くありませんでした。
そこでチェコの醸造家たちは、ラガービールの発展が目覚ましい隣国のドイツから醸造技師を招いてビールの技術を学ぼうとしました。

その時にチェコへ招聘されたのがヨーゼフ・グロルです。
彼はドイツ南部ミュンヘンの醸造家で、ミュンヒナー(※)と呼ばれる濃色タイプのラガービールの造り手でした。

ヨーゼフ・グロルの手によってチェコで造られるミュンヒナーは、もちろん濃色タイプのビールとなると予想されていましたが、実際にはそれと全く異なる特徴を持ったビールが生まれたのです。

黄金色に輝く液体と純白の泡、そして喉をするすると通り抜ける爽快な飲み心地。
その全く新しい外観と味わいは、感動的なものでした。

この時に世界初の淡色ラガービールのピルスナーは誕生したのです。

※ミュンヒナー…ミュンヘンで造られる濃色麦芽を使用した伝統的なダークラガー。広義ではデュンケルの種類のうちの1つ。

偶然が生んだピルスナー

なぜミュンヘン式のビール造りをしたはずなのに、黄金色で爽やかな味わいのピルスナーが生まれたのか?

その理由にはピルゼン地区の水質が大きく関係しています。

ミュンヘンの水質は一般にミネラルを多く含む硬水であるため、麦芽の色や味わいを引き出したコクのある濃色タイプのビールが造られます。
それに対してピルゼンの水質はミネラルの少ない軟水であるため、すっきりとした味わいとクリアな外観のビールが出来上がるのです。

濃色タイプのビールが主流だった当時において、この美しく黄金色に輝くビールは瞬く間に世界へと広がっていきます。

ピルスナーの誕生以降、チェコにビール醸造の技術を伝えたドイツをはじめ、ヨーロッパ各国で淡色のビールが製造が始まりました。

ピルスナーの人気を後押しした要因は水質の他にもいくつかあります。下記、その一例です。

  • 新たな麦芽の焙煎技術が生まれ、淡色麦芽を作れるようになった
  • ボヘミアはガラスの産地であり、黄金色のピルスナーと透明なガラスは相性が良かった
  • 1800年代に起こった“ビール三大発明”により、ラガービールの製造が盛んになった

特にこの中でも“ビール三大発明”がピルスナーの人気拡大に大きく貢献することとなります。

ビール三大発明と大企業がピルスナーを世界へと拡大させた

パスツールの低温殺菌、リンデのアンモニア冷凍機、ハンセンの酵母純粋培養のこれらビール三大発明は、ビールの品質を安定化させ、年間を通じたラガービールの製造を可能にしました。

これを機に大きな資本を持った大企業がラガービール、特にその当時に人気のあったピルスナーの大量生産に着手し始めました。
口当たりがよく飲みやすいピルスナーは大衆に好まれ、世界各国で広く受け入れられるようになります。

ピルスナーの大量生産は20世紀の間にどんどん拡大を続け、世界全体のビールの7割以上がピルスナーという状況となりました。

こうして数世紀をかけて続いてきたエールビールの歴史を、ピルスナーはわずか100年ほどで塗り替えてしまいました。
今日でもこの流れは続いており、世界の様々な国でピルスナーは飲まれ続けています。

ビールの科学三大発明
参考URL:http://www.newsdigest.de/newsde/gourmet/beer/3762-893/

ピルスナーの種類

ピルスナーはチェコ発祥のビアスタイルですが、世界に広まったことでその種類は細分化されました。
ここではその中でもこれだけ覚えておけば大丈夫!という特に主要な2種類のピルスナーをご紹介いたします。

ボヘミアンピルスナー

ピルスナー発祥の地であるチェコで造られるタイプのピルスナーです。

ボヘミアンピルスナーの特徴は、モルティ(モルトの風味が効いている)であるところです。

伝統的なデコクションマッシングという麦汁煮沸の製法が使われており、麦芽の香ばしさや甘みがより引き出された味わいのピルスナーが出来上がります。
これによって焼いたパンや蜂蜜のような甘く香ばしい香りがビールに感じられ、ふくよかな味わいを生み出します。

ホップはチェコ原産のザーツホップが使われ、クリーンでスパイシーな香りがあります。

ジャーマンピルスナー

ピルスナーを生み出すきっかけとなったドイツで造られるピルスナーです。
ジャーマンピルスナーはキレのある味わいと苦味が特徴です。

ドイツのピルスナーは発酵度が高くすっきりとした味わいとなるため、その分ホップの苦味をより感じることができます。
香りからはドイツホップの特徴であるフローラルな華やかさと、大地のような落ち着きを感じることができます。

また、ジャーマンピルスナーの中でも地域によって特徴が異なり、北部のものはホップが効いており、南部のものはモルトの要素が強くなります。

日本はドイツから様々な醸造技術を学んだため、国内で生産されるピルスナーはジャーマンスタイルであることが多いです。

ピルスナーの美味しい飲み方

ピルスナーの特徴は爽やかな味わいとのど越しの良い口当たりです。
この特徴を最大限に活かすには温度グラスがポイントになります。

温度

ピルスナーの適温は4~7度

より温度を低くすれば甘みを感じにくくなるため、ドライな切れ味のビールとなります。
また、良く冷やしたビールには炭酸ガスが液体にしっかりと取り込まれるため、爽快なのど越しを感じやすくなります。

ボヘミアンピルスナーのようなモルトの要素が強いピルスナーの場合は、少し温度を上げるとその豊かなモルトの風味を楽しむことができます。

グラス

グラスは背が高く、口の狭いものがオススメです。

背の高いグラスを使うことでビールを飲むときに液体が真っ直ぐ口の中へと入ってくるので、ピルスナーのピリリとした炭酸をより喉に感じやすくなります。

また、グラスの背の高さは底から湧き上がる炭酸の泡を綺麗に映す効果もあるのです。

グラスの口の狭さは、液体の表面積を小さくして炭酸の揮発を抑える効果があるので、爽快感を保つことができます。

CRAFT BEER TIMES編集部が選ぶオススメのピルスナー5選

ここまで、私たちにとって最も身近なビールであるピルスナーについての解説をさせていただきました。

ということで、最後はオススメのピルスナーをご紹介いたします!
違いが分かりにくいピルスナーだからこそ、その違いわかった時が面白いですよ!

ピルスナーウルケル

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チェコ生まれの元祖ピルスナー!

全てのピルスナーはこの一本から始まりました。
ボヘミアンピルスナーならではの麦の優しい甘味と旨味を強く感じることができます。

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モルトとホップの繊細なバランスが取れた味わい。
すっきり爽やかで飽きが来ません。和食と合わせたくなるビールです。

富士桜高原麦酒 ピルスナー

クリアなキレと苦味が特徴のジャーマンピルスナー。
フローラルかつスパイシーな香りが楽しめます。

箕面ビール ピルスナー

マイルドで滑らかな口当たりのボヘミアンピルスナー。
モルトの柔らかな甘さとフレッシュなホップの香りが絶妙です。

Stone Brewing  Enter Night PIlsner

爽やかながらインパクトのあるひと味違うピルスナー。
ホップを大量に使った華やかな香りとしっかりとした苦味が感じられます。

まとめ

今回は世界で最も消費されているビール、ピルスナーについてご紹介させていただきました。

ピルスナーについて今回の記事でこれだけは覚えて欲しい!という内容を以下にまとめました。

  • ピルスナーはチェコの軟水によって生まれた
  • ビール三大発明によって製造しやすくなったピルスナーは、大企業が大量生産したことによって世界に広まった
  • ピルスナーには、モルティなボヘミアンピルスナーとホップが効いたジャーマンピルスナーがある

次にピルスナーを飲むときには、ぜひ意識してみてください。
このピルスナーはボヘミアンかな?ジャーマンかな?なんて考えながら飲むのも楽しいですよ。

IPAやスタウトも美味しいけど、ピルスナーも決して負けていないのでいろんな種類を飲んでみてくださいね!

それではまた!

熊倉
この記事を書いた人
熊倉
1993年生まれ、酒屋勤務、新潟市在住。いろいろお酒を飲むけどいつもビールに戻ってくる。セッションIPAを水筒に入れて持ち歩きたい。大衆酒場が好き。
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