ボックってどんなビール?その特徴や歴史、オススメの銘柄を紹介します

ボックってどんなビール?その特徴や歴史、オススメの銘柄を紹介します

こんにちは!ビールで米を炊くとウマいという噂を聞いて興奮しているCRAFT BEER TIMES編集部の熊倉です!

突然ですが、ボックというビールをご存知でしょうか?

ボックは比較的マイナーなビアスタイルでありますが、IPAやスタウトなど近年人気のビアスタイルよりもずっと古い歴史を持った伝統的なビールなのです。

ドイツ北部にて誕生して以来、力強い高品質な味わいのボックは中世のヨーロッパで大きな人気を誇っていました。

今回はそんな隠れた人気ビール、ボックについてご紹介していきたいと思います。

  • ボックってどんなビールなの?
  • どんな特徴があるのか知りたい
  • おすすめのボックを飲んでみたい!

上記のようなことが分かる内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください!

ボックの概要

ボックは、ドイツ北部のアインベックの街で生まれたビアスタイルです。
その発祥は14世紀ごろとされており、世界に存在するのビール中でもかなり歴史のあるビアスタイルのひとつに数えられます。

ボックはラガービールに分類されますが、ラガービールらしからぬ力強いコクのある味わいが特徴です。
その豊かな味わいは中世のヨーロッパにおいにて絶大な人気を誇り、貿易輸出の主力商品として北ドイツの発展に大きく貢献しました。

ボックの名称の由来は諸説あります。
発祥の町であるアインベックがドイツ南部のミュンヘンでアインボックと鈍って呼ばれるようになり、短縮されてボックとなった説。
またはボックを飲むと雄山羊(ドイツ語でボック)のように元気になったことからその名がついたという説が有力です。

ボックの特徴

ボックの特徴

ボックは中世のドイツで一大人気を誇ったビアスタイルです。
なぜボックはそれほどまでに人気があったのでしょうか?ここではそんなボックの魅力に迫っていきます。

凝縮感のある香りと味わい

ボックには非常にコクのある味わいがあります。

濃密なモルトの蜜のような甘さが強調されているものが多く、リッチで満足感に溢れた味わいです。
香りにはプルーンや熟したバナナなどの濃厚なフルーツや、焼いたパンや焼き菓子を思わせる穀物系のフレーバーを豊かに感じることができます。

この力強い味わいと濃密な香りが、ボックの大きな特徴です。

高いアルコール度数

ボックのアルコール度数は6〜7%と、平均的なビールよりも強めです。
このアルコール度数の高さが、ボックの強い香りと味わいをさらに強いものへと変化させます。

ボックは輸出用のビールとして発展したことから、防腐対策としてアルコール度数が高められたと考えられています。
ボックをさらに強くしたドッペルボックのアルコール度数は、8~10%程度と更に強烈になっています。

ボックの歴史

ボックは古い歴史を持ったビアスタイルです。
どのようにしてボックが発展していったのかをここで確認していきましょう。

ドイツ北部、アインベックで誕生

14世紀ごろ、ドイツ北部・アインベックの街にてボックは生まれます。
当時の北ドイツでは、ブレーメン、ハンブルグ、ケルン、ドルトムントなどが加盟する「ハンザ同盟」という海外貿易を目的とした都市の繋がりがありました。

このハンザ同盟に参加していたアインベックのビールは品質が特に優れており、イギリスやロシア、北欧諸国へと盛んに輸出されていました。
当時のボックは原料の一部に小麦が使用され、上面発酵酵母を使用したエールビールであったとされています。また、ボックという名称はこの頃まだ使われておらず、「アインベックビール」と呼ばれていました。

アインベックビールは輸出用につくられたビールなので、輸出に耐えうる防腐効果を得るためにホップを効かせ、麦汁濃度とアルコール度数が高められました。
これによって、ボックの特徴である濃厚で力強い味わいが生まれたのです。

マルティン・ルターとボック

ボックの有名なエピソードに、マルティン・ルターとの関りがあります。
マルティン・ルターはドイツの神学者で、キリスト教の改革である「宗教改革」に尽力した人物です。
彼の功績をつくったきっかけは、ボックによるものだとも言われています。

16世紀初期のドイツは、ローマ・カトリック協会が実権を握る階級社会でした。
絶大な権力を持つ教皇の支配体制は、キリスト教の思想から離れた協会の利権を追求するものへと腐敗していきました。

マルティン・ルター

そんな協会に異を唱えたのがルターです。
ルターはローマ・カトリック協会に対する批判を発表すると、教皇側はルターに考えを改めさせるために「ヴォルムス帝国会議」への喚問を要求しました。

強い信念を持っていたさすがのルターも、会議の直前には恐怖から足がすくんでしまいました。

そんなルターへ、1リットルのジョッキが彼の秘書から差し出されます。その中身はアインベックビール(ボック)で満たされていました。すると彼はジョッキを一気に飲み干し、頬を赤らめながら議会へと登壇していきます。

アインベックビールに勇気を貰ったルターは、議会でも自分の信念を曲げることなく協会に立ち向かいました。その結果、彼の姿勢に感銘を受けた諸侯らの支持を受け、ルターは活動を続けることが出きたのです。

後にルターは修道院でビール醸造を学んだ女性と結婚し、その際にもアインベックのビールが一樽まるごと贈られたと言います。

このように、マルティン・ルターが愛し、彼を奮い立たせた誇り高いビールとして、アインベックビールは多くの人から関心を集めるようになりました。

ドイツ南部、ミュンヘンでさらなる飛躍を遂げる

ミュンヘン

アインベックビールの人気はドイツ国内でも評判を呼んでいました。
16世紀の終り頃、ミュンヘン・バイエルン公国の時の権力者ヴィルヘルム5世は、宮廷専属のビール醸造所にドイツで最も優れたビール職人としてアインベックの醸造家を招き入れました。

その醸造家は故郷であるアインベックのビールをミュンヘンでもつくり始めます。
ところが醸造の地が変わったことから、アインベックビールの発酵は上面発酵酵母から下面発酵酵母へと切り替わります。
そして、アインベックビールの呼び名もミュンヘンに来てからは「ボック」と呼ばれるようになりました。

さらにボックはミュンヘンで様々な進化を遂げます。
修道院の断食期間に飲むビールとしてつくられた「ドッペルボック」、淡色で春先に飲まれる「メイボック」など、多様な派生スタイルが誕生しました。

ボックの種類

ボックの種類

ボックには様々な派生スタイルがあります。ここではそんなバリエーション豊かなボックの様々なタイプをご紹介していきます。

ボック

通常タイプのボックです。
平均的なアルコール度数は6~7%程度で、モルトの豊かな風味が強調されています。ビールの色は黄金色から濃い茶色まで様々です。

ボックの故郷であるアインベック産の銘柄はホップの苦味が程よく感じられますが、ドイツ南部のミュンヘン産のボックはモルトの主張が強いタイプがほとんどです。

他のビアスタイルと組み合わされることもあり、「ヴァイツェンボック」や「ラオホボック」などの派生スタイルもあります。

ドッペルボック

ボックの味わいとアルコール度数をさらに強化したタイプです。ドッペルとはドイツ語で「二重」の意味を持ちます。

ドッペルボックは修道院の断食のためのビールとしてつくられました。
断食期間中の固形物の摂取は禁じられていますが、液体を飲むことは許されていました。
中でもビールは「液体のパン」とも呼ばれ、修道院の間では断食期間中にビールを飲むことは当然のように行われていました。

ドッペルボックは濃厚な味わいがあり、ドライフルーツやパン菓子のような強い香りを感じます。
アルコール度数は8~10%まで上がり、強烈なインパクトを感じます。

メイボック

メイボックは、ミュンヘンで生まれたその名の通り5月(=メイ)に飲まれるボックです。比較的色合いが薄く、ホップが効いた味わいがあります。

ミュンヘンの醸造家は、ビールの腐敗を防ぐために気温の低い冬季にビールづくりを行っていました。
冬の間につくられたビールは春から夏の間にかけて熟成されます。その中でも冬が開けて最初に飲まれるのがメイボックなのです。

ドイツでは春になると各地で様々な祭典が行われます。
これらの祭典では歴史的にメイボックが飲まれており、今でもメイボックは春の風物詩としてドイツでは親しまれています。

アイスボック

アイスボックはドイツ中東部にあるクルムバッハの街で生まれた、さらにハイアルコールなボックです。アルコール度数は10%以上を越えるものがほとんど。

完成したボックを凍らせることによって水分のみを取り除き、アルコール度数を高めてあります。

アイスボックの誕生は、完成したボックビールの樽を地下貯蔵庫に運び忘れ、冬の外気温によってビールを凍らせてしまったことがきっかけと言われています。

名前にはアイスとつきますが、アイスボックは体が熱くなるようなアルコールの強さと、濃縮された密度の高いボックの味わいを感じることができます。

CRAFT BEER TIMES編集部が選ぶオススメのボック5選

それでは最後に編集部が厳選したオススメのボックをご紹介させていただきます!
濃厚かつフルーティーなボックの味わいをぜひ体験してみてください!

1. 宇奈月ビール ボック カモシカ

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ロースト麦芽を使用した芳醇さ溢れる味わいのボックです。
スパイシーでコクを感じ、なめらかな喉越しのバランスが秀逸な黒部の地ビールです!

2. 御殿場高原ビール ヴァイツェンボック

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濃厚なバナナの香りがたまらないヴァイツェンボック。
通常のヴァイツェンの上品さとは異なる、パンチの効いたコクとまろやかさがたまらない!

3. パウラーナー サルバトール

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救世主の名を冠する伝統のドッペルボックです。
修道士が断食期間に飲むためにつくられたビールで、バニラやカラメルのような香りとモルトの重厚感のある味わいを楽しめます!

4. サミクラウス

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サンタクロースの誕生日である12月6日に一度だけ発売されるオーストリアのボックです。
アルコール度数は驚異の14%!濃密な甘味と強く長い余韻が特徴的。
長期熟成にも耐えうるスペシャルなビールです!

5. シュナイダー・アヴェンティヌス アイスボック

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濃厚でフルーティーな風味のアイスボックです。
強いアルコール度数とコクのある甘味はボリューム感たっぷりで、干しぶどうや赤ワインを思わせる高貴な香を感じることができます!

まとめ

今回は知る人ぞ知るドイツビール、ボックについてご紹介させていただきました。

要点まとめ
  • ボックは濃厚で力強い味わいのラガービール
  • ドイツ北部のアインベックで生まれ、南部のミュンヘンに渡ることで発展した
  • ドッペルボックやメイボックのような様々な派生スタイルがある

濃厚で力が湧き上がってくるような味わいのボックは、嗜好品としてではなく滋養強壮の飲み物として中世のヨーロッパでは飲まれていました。
マルティン・ルターに力を与えたように、現代を生きる我々も元気が欲しいときにはボックを飲んでパワーを貰いましょう!

特に寒さの厳しい時期や、疲労の溜まっているときに飲むボックは最高です!
みなさんもぜひこの力みなぎる伝統のビールを味わってみてください!

それではまた!

熊倉
この記事を書いた人
熊倉
1993年生まれ、酒屋勤務、新潟市在住。いろいろお酒を飲むけどいつもビールに戻ってくる。セッションIPAを水筒に入れて持ち歩きたい。大衆酒場が好き。
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